QMA、その他ゲーム以外のことも、つれづれなるままに書いていこうと思います。どんな文章になることでしょうか。
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医療と政治を考えるための、ひとつの材料として(中)
2008-12-16-Tue  CATEGORY: 医療崩壊
今回は、前の続きです。李先生の講演の、続きを引用します。

(ここから引用)

弱者を追い詰める民間保険天国の米国

米国で民間医療保険の加入者は、総人口3億人のうちの約2億人にとどまる。市場原理なのでお年寄りやお金のない人は落ちこぼれる。彼らを救済しようとする公的医療保険として、メディケア(高齢者・障害者)とメディケイド(低所得者)がある。各約4,000万人で、ほかに無保険者4,500万人がいる。

日米医療費比較
                   米国     日本
GDPに占める医療費の割合 15.8%   8.0%
一人当たり医療費       $5,952  $2,249
民間負担            $3,282  $1,482*
税負担             $2,670@  $767*
―――――――――――――――――――――――――
米保健省調べ、2003年
*は日本での公民負担割合からの計算値
@米国は連邦予算の25%を医療費に支出(日本は10%、社会保障全体で26%)

日米は同じ「小さな政府」だが、医療費を比較すると上のようになる。米国は1人当たりにかかる税負担が日本の3.5倍。それなのに、わが国では「公的負担は限界に達した」と言われる。国家予算からの支出は米国が25%なのに対し、日本は10%にすぎない。

米国で民間医療保険が高いのは(1)運営の効率が悪いことと(2)「サクランボ摘み」、つまり、いいとこ取りの弊害からである。

(1)について、米国にメディカル・ロス(医療損失)という概念がある。徴収した保険料のうち、医療に使う支出の割合を示したもので、「民」の81に対して「公」は98となっている。営利の保険会社は85を超えると、ウォールストリートで「あの会社は経営が下手だ」と株価が下がる。今、日本では「公」を減らして「民」を増やすと言っている。

(2)について、米国の保険会社は儲けを多くするため、病人を保険に入れない。自営業者の保険料が高く設定してあるのもそのためである。反対に大企業で働く人の保険料は安い。健康な人が多く、大口の顧客を獲得できるからである。そのため、公的保険に有病者が集中して加入者の負担が増すという悪循環に陥っている。

テネシー州では入院日数を年間20日までとしたり、受診回数を10日までと制限を設けることが常態化している。ユタ州ではさらに、救急外来や専門医受診、入院医療を保険から外す動きが起きている。サービスカットされたこの新しいメディケイドは医療保険などと言えず、事実上の無保険者化である。そのことが民間保険への需要を高め、毎年2、3割も値上げすることにつながっている。社会に公の保険が1つだけなら、こうした悲劇は起こらない。

わたしは昨年5月、米国の病院で患者として手術を受け、8日間入院した。病院から室料を含め5万229ドル、日本円でおよそ500万円の請求があった。医師たちからのおよそ5,100ドルと合わせおよそ5万5,000ドルだったが、保険に入っていたため約9,000ドルすなわち約90万円ですんだ。もし保険に入っていなかったら、この値引きは受けられない。しかも逆進性があり、貧しい人ほど高い。

こうした欠陥ある医療制度は、借金地獄の温床になっている。無保険者が入院して多額の借金を残すと、一定期間後にプロによる債務の取り立てが始まる。患者の持ち家に抵当権を設定し、裁判所や弁護士の費用も債務に加算する。債務者は一度呼び出しを無視すれば、逮捕状を請求される。警察による肉体差し押さえだ。医療費負債による個人破産は原因の第2位に上昇している。名門イエール大学で過酷な取り立てが問題になった後、コネチカット州では医療費負債の利子を年5%に制限した。

混合診療は製薬会社の暴利とえせ医療のため

日本では保険診療と自由診療の混合を認めていない。ある46歳の男性がくも膜下出血を起こし、緊急手術した。術後血管攣縮(れんしゅく)による死亡や後遺症の発生が心配されるが、ニモジピンという薬を使えば、発症率を3割から2割に抑えられる。この薬は日本では保険外で、混合診療の禁止により、使用する場合は全額自己負担となる。だから混合診療は一見患者に好都合に思われるかもしれない。不幸にも、薬が届く前に脳血管攣縮が始まった。実はこの患者はわたしの弟である。しかし、混合診療がけしからんという意見は変わらない。

第1に、財力による差別を容認する。ニモジピン1カプセルに10万円の値が付けられれば、3週間の投与で2,560万円の負担。この額を払える人だけが恩恵を得られる。

第2に、えせ医療が横行する危険がある。医療保険に含まれるのは、有効性・安全性が認められたもののみ。確認なしの医療が自由診療の市場で大手を振ると、いかがわしい医療が横行しかねない。

第3に、医療保険本体がアビュース(乱用)される危険。美容形成手術が本来の目的で入院した患者が、肝障害などという保険病名を付けて入院費用を保険に払わせ、手術料だけ払うような悪用が生じかねない。

第4に、保険医療が空洞化する危険性がある。製薬会社が新薬を出す場合、手間暇コストをかけて治験をしなくなる。需要の高い薬は高い値段を付け、自由診療で売ってしまえとなれば、時代遅れの効き目の悪い安い薬だけが保険診療といった事態になりかねない。

中国は混合診療の先進地で、1980年代初めに医療に市場原理を導入した。患者は前金を要求され、払えなくなった時点で退院を強いられる。退院患者の4割は中途で去る。米国では1,000万円払わないと白血病の治療を受けられない。それにもかかわらず、規制改革・民間開放推進会議議長だった宮内義彦氏は、次のような発言をしている。

「国民がもっとさまざまな医療を受けたければ、『健康保険はここまでですよ』、後は『自分でお払いください』というかたちです。金持ち優遇だと批判されますが、金持ちでなくとも、高度医療を受けたければ、家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう。」(『週刊東洋経済』2002年1月26日号)

混合診療導入の主張には、問題のすり替えがある。ニモジピンのようないい薬が使えないのは、混合診療を認めていないことが問題なのではなく、保険診療に含まれていないことが問題なのである。

この薬は米国で89年に認可されたが、なぜ日本で認められないのか。販売権を持つ製薬会社に聞くと、認知症の人を対象に臨床した結果、はねられたという。年間1万5,000人しかいない、くも膜下出血の患者ではなく、何十万人という認知症の人に毎日飲んでもらうことを狙って認可申請した。製薬会社の欲深さのため、日本のくも膜下出血の患者が犠牲になっている。

ぼったくりバーと変わらない株式会社病院

米国では、株式会社が巨大病院チェーンを経営する。医療を市場に委ねれば、日本で何が起こるかが分かる。米国第2の病院チェーン、テネット社の2002年の売り上げは1兆7,000億円に及ぶ。営利病院は、競争相手の病院を買収して閉鎖するなど、強引な手で市場の寡占化を図る。コストを抑えるための合理化を徹底し、ベテラン看護師の解雇や不採算部門の切り捨てを行う。患者への請求を高くし、診療報酬の不正請求を組織的に行う。大病院チェーンに例外はない。

非営利病院との価格差は歴然としている。巨大営利病院は言い値で商売ができる。下の表はサンフランシスコ・ジェネラル・ホスピタルという非営利の病院と、テネット社が保有するモデスト・ドクターズ・メディカルという病院との医療行為の価格比較。営利病院がぼったくりバーと変わらないことが分かる。

非営利と株式会社病院との商法比較
――――――――――――――――――――――――――――――――――
サンフランシスコ・ジェネラル・ホスピタル(非営利)/モデスト・ドクターズ・メディカル(テネット社)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
胸部X線   $120 / $1,519
血液像検査    $50 / $547
血清生化学検査  $97 / $1,733
頭部CT     $950 / $6,599

2002年10月、ウォール・ストリート・ジャーナルにテネット社の診療報酬不正請求の記事が載った。FBIが強制捜査に入り、株価が大きく下がった。その直後、同社が所有するカリフォルニアの病院で必要のないバイパス手術をしていたことが明るみに出て、株価はピークの4分の1にまで暴落した。米巨大病院チェーンではこうした犯罪が頻発しており、事件によっては1,000億円を超える巨額の示談金を年末に支払うことが恒例化している。

病院が株式会社化されると死亡率が上昇することが、全米3,645の病院を12年にわたり調査した結果から出ている。これによれば、非営利から株式会社に変更された病院では、平均死亡率0.266から0.387へと5割増えた。一方、株式会社から非営利に変わった病院では、死亡率は0.256から0.219へと下がっている。入院費用は株式会社化によって、8,379ドルから1万807ドルに約2割上昇。逆に、非営利に転換しても7,204ドルから7,486ドルへと、あまり変わらない。規制改革会議は「株式会社・経営のプロがやれば多彩な医療サービスが展開されて患者のためになる」と言ったが、正反対の結果が出ている。
 
憲法違反が疑われる民間保険導入

米通商代表部が毎年作成する「日米規制改革及び競争政策イニシアチブ(『年次改革要望書』)」には、日本への改革要求項目が記されている。郵政民営化が決着した今、大きなターゲットになっているのが医療改革。混合診療の導入と株式会社の参入を求めている。

米国の保険会社が日本で甘い汁を吸う構造はすでに出来上がっている。ある米国系保険会社は、米本国の2倍以上に当たる110億ドル、日本円で1兆1,000億円の収入を日本支社で得ている。「公の保険は欠陥が多く、民間の保険を買わないと不安」というイメージが刷り込まれた結果だ。

高齢化と医療費の関係を1960年からのデータで国際比較すると、日本では寿命が伸びる割に節制が利いている。逆に米国は、長生きできずに医療費だけ伸びている。この制度を入れようとしている日本はこれから、お金のない人がバタバタ倒れたまま放置されるだろう。

新自由主義派は「自助」「自律」「自己責任」という言葉を好む。「民」主体の米国型の保険制度は不平等・不公平であるだけでなく、社会全体の医療費負担も高くつく。一方、西欧・日本型は平等・公平であるだけでなく、社会全体の医療費負担も安く上がる。

日本の医療は「タイタニック化」の危機に直面している。「民」の保険は1等の客は通すが、2等・3等の客を差別する。つまり、お金のある人の命は助けるが、ない人は助けない。日本が誇る「皆保険丸」を氷山にぶつける行為と変わらない。

憲法25条は次のように定める。
(1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
(2) 国は、すべての生活部門について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

差別的な「民」保険の導入は、憲法違反ではないか。

(引用ここまで)

引用元です

引用は、ここで終わりです。もし余裕があるなら、引用元も見ていただけると嬉しいです。
引用した文章の中から、特に注意が必要な部分を抜粋します。

米国にメディカル・ロス(医療損失)という概念がある。徴収した保険料のうち、医療に使う支出の割合を示したもので、「民」の81に対して「公」は98となっている。営利の保険会社は85を超えると、ウォールストリートで「あの会社は経営が下手だ」と株価が下がる。今、日本では「公」を減らして「民」を増やすと言っている。

米国の保険会社は儲けを多くするため、病人を保険に入れない。

こうした欠陥ある医療制度は、借金地獄の温床になっている。無保険者が入院して多額の借金を残すと、一定期間後にプロによる債務の取り立てが始まる。患者の持ち家に抵当権を設定し、裁判所や弁護士の費用も債務に加算する。債務者は一度呼び出しを無視すれば、逮捕状を請求される。警察による肉体差し押さえだ。医療費負債による個人破産は原因の第2位に上昇している。

「国民がもっとさまざまな医療を受けたければ、『健康保険はここまでですよ』、後は『自分でお払いください』というかたちです。金持ち優遇だと批判されますが、金持ちでなくとも、高度医療を受けたければ、家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう。」(『週刊東洋経済』2002年1月26日号)

営利病院は、競争相手の病院を買収して閉鎖するなど、強引な手で市場の寡占化を図る。コストを抑えるための合理化を徹底し、ベテラン看護師の解雇や不採算部門の切り捨てを行う。患者への請求を高くし、診療報酬の不正請求を組織的に行う。

米巨大病院チェーンではこうした犯罪が頻発しており、事件によっては1,000億円を超える巨額の示談金を年末に支払うことが恒例化している。

病院が株式会社化されると死亡率が上昇することが、全米3,645の病院を12年にわたり調査した結果から出ている。

米国の保険会社が日本で甘い汁を吸う構造はすでに出来上がっている。ある米国系保険会社は、米本国の2倍以上に当たる110億ドル、日本円で1兆1,000億円の収入を日本支社で得ている。

高齢化と医療費の関係を1960年からのデータで国際比較すると、日本では寿命が伸びる割に節制が利いている。逆に米国は、長生きできずに医療費だけ伸びている。この制度を入れようとしている日本はこれから、お金のない人がバタバタ倒れたまま放置されるだろう。


皆保険制度には、貧者も医療から疎外されずに済むというメリットがあります。社会の構成員全体の健康が維持されることにより、社会の活力も維持されます。この国で戦後、共に頑張って、共に栄えることが出来たのは、皆保険の働きでもあります。

皆保険制度の破壊は、即ち生活の破壊です。民間の保険会社に医療を売り渡す行為は、真っ先に貧者を医療から疎外します。貧者の健康を害する行為は、社会全体の活力に悪影響を及ぼすだけでなく、格差の拡大と階層の固定化をもたらします。つまり、世々限りなく搾取される一般大衆と、搾り取って肥え太っていく一部階級の二極化を、不可避的にもたらすと想像されます。実際、アメリカがそういう国になってしまっていますし。その現実を、しっかり見据える必要があります。

最後にこっちも、紹介します。

「シッコ」公式サイト

「ジョンQ」公式サイト

果たして、こんな国にしてしまっていいものかどうか、しっかり考えてください。

次は、もう少し自分なりの考察を続けるつもりです。守るために必要なもの、患者として守るべき節について、思うところです。
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