QMA、その他ゲーム以外のことも、つれづれなるままに書いていこうと思います。どんな文章になることでしょうか。
月の光に照らされて
事業仕分けに潜む闇
2009-11-18-Wed  CATEGORY: 医療崩壊
表題ですが、一見華やかなショーの裏で、確かに陰謀が進められています。このような陰謀に抗する事ができないというのであれば、それが何者であれ非難の対象を免れません。

今回はJA1NUT先生から文章をお借りいたします。この場を借りて感謝します。

事業仕分けは政治ショー

事業仕分けという、政治・行政の劇場公演

是非両方とも目を通していただきたいのですが、こちらでもコメントします。引用部分は太字にしています。

「事業仕分け」が、財務省主導で行われていたのではないかと疑ったら、テレビ番組で財務大臣があっさりそれを認めていた。財務省主計局が、仕分けを行う事業を選定したようだ。その上で、財務大臣は、財務省が他の省庁と並行関係にあるから、(財務省から無理を他の省庁には言いがたい)、こうして仕分けをしてもらえると、それ(予算削減)を各省庁にお願いしやすくなると語っていた。その点で、今回の「事業仕分け」は画期的なことだそうだ。

「事業仕分け」は、一種のショーであることは間違いない。一つの項目に1時間程度しかかけないで、政治家と民間からの素人の「仕分け人」がばっさりと切って行くのだ。いくら無駄の満載な事業であるとしても、1時間の検討で結論が出るようには思えない。これは、結果が先にありきの政治ショーなのだ。ネットに同時配信も行い、上手くいったと政権与党担当者、それに実質的に取り仕切った財務省担当者はほくそ笑んでいるのだろうか。

今回行われた「事業仕分け」には、幾つも疑問があるが、まずは財務大臣も認めている通り、財務省主導で行われた作業で、「事業仕分け」に載せるかどうか財務省主計局が決めた時点で、仕分けは実質既に終わっているのだ。中身は、官僚主導であり、外部の「有識者」からなる諮問会議の類に、官僚の決めた方針を形式的に是認させるこれまでのやり方と寸部違わない。


民主党は結党当時から選挙のためだけに存在する寄せ集めであり、基本思想の存在すら疑わしい党派でした。そうした党にまとも以上の行動原理など期待できるわけもありませんが、その背後には財務省が存在しているという話です。彼らの考えがまともであれば問題ないのですが、勿論(?)そんなことはありません。

つい先日、マスコミを通して、開業医と勤務医の「所得格差」・・・即ち、開業医は勤務医の1.7倍の収入があるという情報・・・が流された。その後、その所得格差を平準化するという方向性が、例の「事業仕分け」で示された。どこかで既に聞いたことのある台詞。

この流れは、経済財政諮問会議を通して、医療費を削減しようとする時に用いられた手法と同じだ。

この「事業仕分け」を取り仕切っていたのは、財務省であることが強く疑われた。JCASTニュース等で、財務省が民主党に入れ知恵して仕立てた「事業仕分け」であったことを報じている。

勤務医と開業医が同列に並べられないことは、ここでも繰り返し記してきた。開業医の多くは勤務医も長年経験し、その上で、自分の事業を立ち上げた経営者だ。大きな初期投資が必要であり、設備の更新補修も常に必要となる。退職金も自分で得なければならない。そうした点で、勤務医と大きく異なる・・・といったことは、財務省の官僚は先刻承知のはずだ。


財務省は社会福祉全般について、予算など必要ないという立場で一貫しています。新型インフルエンザ対策にすら「予算は必要ない」と公言したこともありますし、最近は再び医療費の削減を要求する無法に及んでいます。何度も書いたことですが、医師は過労に喘ぎ苦しんでいるし、適正な残業代すら支払われていないのが現実なのです。人件費すら惜しんで医療費削減を続け、そのツケを現場の医療関係者に押し付けているのが、この国の政治であり行政なのです。
世の中、タダなんてことは基本的にありません。先生方に頑張ってもらいたければ、それだけの報酬を社会全体で提供する必要があります。過労で斃れずにすむだけの勤務環境が実現可能な、その程度の診療報酬すら、この国では実現していません。国内総生産の8%しか医療に提供しないケチな国の国民が、今までのような医療を受けてこられたこと自体が贅沢だったのです。そのことをしっかり皆に伝え、正しい意思決定と行動を促す程度のことも、この国の官吏には出来ないという訳です。

待遇面や、医療訴訟で極めて厳しい状況にある勤務医を救うという名目で、医療費を更に削減し、開業医を窮乏化させることを目指しているのだろう。それが実現すれば、医療費削減とともに、これまで多くの勤務医のキャリアーパスであった開業が難しくなる。それによって、勤務医がどのような労働環境だろうが残らざるを得なくなる。医師の強制配置や、官僚支配化の医療体制の維持が可能になるのだ。今回の事業仕分けで、勤務医のことを考えていないことが、医療の項目の最後に図らずも堂々と記されている。曰く、医師の人件費削減は、医師の増員を行ってから行う、と書かれている。

話はそれだけではない。徹底して医療費を削減すれば、丁度歯科医療と同様に、医療側から進んで「混合診療」解禁を望むようになることを、官僚と保険資本が見越している。すると、医師の人事面での官僚支配と同時に、経済面での支配が、保険資本によって行われるようになる。保険資本は、言わずと知れた、官僚、特に財務官僚の天下り先である


この話は、十分にありえると思います。彼らは国民の(特に、持たざる国民の!)幸福ではなく私利私欲のために仕事をしている・・・実際、何かあるたび福祉切り捨てを強行しているのは自分たちの利益のためでもあるという仮説は、十分説明可能です。しかも保険会社は利益をひねり出すために、平気で契約者への支払を逃れようとします。日本でもそういうニュースがありましたし、海の向こうでは免責事項を盾に契約者を食い物にする保険会社が跋扈している有様なのです。保健医療の崩壊は、皆の不幸に直結します・・・絶対に、そのようにしてはならない。

民主党のマニフェストに、

脱官僚

崩壊した医療の再生・・・医療費をOECD平均以上に上げる

とあったが、いつの間にか、雲散霧消している


さきの選挙の結果は、前与党が生活破壊を強行したことの報いという意味もあります。むしろ、そのほうが大きいと考えています。小泉氏以降は財界の言うがまま、社会福祉を圧殺してきた・・・皆はそのことを知っていましたし、罰を下す必要があると考えた。ならばなおのこと、前与党の罪を現与党は犯してはならないはずなのですが。所詮選挙目当てで集まったに過ぎない党派、志とは縁遠いその場しのぎと非難することになるのでしょう。これでは、「小泉改革」と何ら変わるところが無い。

どの事業仕分けにも、必ず証券会社関係者が入っていたことが、この事業仕分けの特質を表している。証券会社は、保険資本を含む金融資本と密接な関係にある。昨年だったか、不正取引で営業停止処分になった、某保険会社(はっきり言おう、BNPパリバ証券である)の関係者が、事業仕分け作業で、開業医のことを、「利権に胡坐をかいている」と口汚く罵っていたのを目にした。こんな連中に罵られるようなことを、我々開業医はしたのだろうか

民主党等政権与党は、大きく膨らんだ国家予算を少しでも削りたいという一心で、事業仕分けをする能力があるでもなく、財務省に丸投げし、公共の監視下という劇場舞台を作り上げ、そこでスケープゴートを仕立て上げ、予算の削減に努めた、というのが、今回の事業仕分けの本質だったのだろう。

こんな国家運営では、まともに機能しないのではないだろうか。でっち上げ、根拠の無いデータを基に、強引に官僚の筋書きを通そうとする。

少なくとも、このような官僚が支配する国で、医療を行う意欲・意気は失せた

今夜、嘔吐の止まらぬお子さんを診るために、仕事場に出てきた。点滴をようやく差し、自室でPCに向かって、こんな台詞を打ち込んでいる自分・・・。やはり、仕事の規模をどんどん縮小しよう。我々の努力は、利権に胡坐をかいた醜い開業医の所業としてしか受け止められないのだから


医療崩壊とは、現場で働く医療スタッフの士気の崩壊です(他にも理由はありますが)。先生方を辟易させ、失望させるという意味で政治や行政の罪は非常に重いです。どれだけ地域の患者たちのために身を粉にして働いても、かくのごとき罵詈雑言と苛斂誅求で応えてくるのだから、そうした国や社会には救済を求める資格など初めから望むべくも無かったのです。

かなり重たい文章です・・・しかしそれでも、しっかり見てもらいたいし、しっかり考えてもらいたいです。少しでもこの問題について思うところがあれば、そして少しでも「医療難民として棄てられたくない」と考えているのであれば、この不条理から目を背けてはならない。政治や行政の貧困に抗うことなく、まとも以上の医療など不可能なのです。何百万歩も譲ったとして、現状に深く失望する先生方に「もっと働け」といった感じの汚いセリフを浴びせてはならないのです。
今回のように、国(特に財務省)は医療破壊を積極的に推し進めてきましたし、政治はそれを何ら押しとどめようとはしなかった。自民党はパトロンであるところの財界に絶対服従であるが故、また民主党は「自民党ではない」思想と行動原理などはなから持ち合わせていないが故、医療に関してまとも以上など期待不可能。メディアはまともな知性も無ければ、大口のスポンサー(即ち財界)に逆らえるだけの理念など持っていない。皆が皆、制度としての医療の維持という観点からは敵でしかない。せめて自分も含め、患者側の人間がまとも以上でなければなりません。

それが皆に出来るのか、あるいは出来ないままで終わるか・・・この結語ばかりですが、それが重要です。
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BPOは、割といい仕事をしてくれましたが・・・
2009-10-30-Fri  CATEGORY: 医療崩壊
表題ですが、そのように思いますが、遅すぎたとも思います。何かあるたび一定の集団を痛罵して、それが正義だと倒錯してきたことの報いは、皆が受けることになるでしょう。

今回はこちらからです。

(引用開始)

民事訴訟報道で倫理違反、「朝ズバッ!」に勧告

10月30日19時56分配信 読売新聞

放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会(堀野紀委員長)は30日、TBSテレビが昨年2月13日に放送した情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」の内容に、「重大な放送倫理違反があった」として、再発防止策を講じるよう勧告した。

問題となったのは、1999年に都内の保育園児が綿あめの割りばしをのどに突き刺して死亡した事故で、治療した医師の責任の有無を巡る民事訴訟判決に対する報道。遺族側の請求を棄却した判決を「民事でも無念の涙」と紹介し、医師の個人名を伏せた上で、司会のみのさんとコメンテーターが「この程度の医療水準でもいいのか」「脳に損傷はないのか、素人でも考える(のに処置できなかった)」などと論評。

これに対し、医師が「名誉棄損に当たる」などと訴え、謝罪放送などを求めてBPOに審理を申し立てていた。

決定では、番組での発言について、「判決内容の正確な認識を欠き、医師の社会的評価を低下させた」と指摘した。一方、謝罪放送の要求については、「論評の域を逸脱せず、(医師に対する)人身攻撃とは認められない」として退けた。

TBSテレビ広報部は、「勧告内容を真摯(しんし)に受け止め、今後の番組作りに生かしたい」とコメントしている。

(ここまで)

この事件については、以前こちらでもコメントしています。

4月17日のエントリーより

メディアの問題点(特に新聞や放送局の問題点)は、まともな確認もしないで好き勝手な文章や電波を飛ばす点にあります。その理由は、まず一日という期限で情報をまとめて発信しなければならないという時間制限の存在。そしてそれを言い訳に、まるで勉強しようとしない甘えです。職業的専門家が(医師に限らず)メディアを遠ざける傾向があるとすれば、それは本職ゆえに理解できる分野の深みをまるで尊重せず、素人の見識を押しつけようとする点にあるのでしょう。
今回の一件で少しはお咎めを受け、おとなしくなるとは思いますが、もうすでに災いの種はあちこちにばら撒かれてしまっているのも現実です。こうしたヨタ記事は一時的に関係者の溜飲を下ろすことにはなるのでしょうが、その結果はとてつもなく無残です。医師たちは既に、何かあるたび自分たちを被告席に無理やり立たせようとする社会全体のありように、深く絶望しています。この事例は小児の救急を積極的にやりたいというスタッフの数を劇的に減らしてしまいました。今後、同じような事例があったとして、誰も助けてもらえなくなる可能性が、とても高いのです。

冒頭でも書きましたが、何かあるたび一定の集団を卑下して自分たちの心を満たそうとするのは、人間的に見て醜悪なだけでなく、時に皆の不幸に直結します。今回取り上げたTBSには大いに問題がありますが、なにも彼らだけの問題ではありません。この件についてTBSだけを悪し様に罵れるほどまともなメディアがどれだけいるのかは疑問ですし、患者側の人間の中にこのことを正しく理解して判断できるほどの見識がある者は、未だ極少であると考えざるを得ません。
その限りにおいて、医療崩壊という流れが変わることはないかと思います。もし処方箋があるとすれば、それはまず現場の過酷さを理解することにあります。特に「仲間の一定数を過労で失うほどの」仕事を強いられ、にもかかわらず感謝されることの少なくなった現状に対する絶望感を、理解していただければと思う次第です。

まあ、最近は人の気も知らずに好き勝手に他人を悪く言うお遊びが、どこかしこで流行っているように感じるのですが。人の心の歪みこそ、社会の歪みの最たる原因だという考えは、多分正しいのかもしれません。果たして皆さんが、その類型に当てはまらない高潔な人たちかどうか・・・自問自答は必要かと思います。
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開業医は税制面で「優遇されてません」が・・・?
2009-10-20-Tue  CATEGORY: 医療崩壊
表題ですが、メディアはミスリードする気満々なので首を傾げてしまいます。メディアの無理解は今に始まったことではありませんが、補足する必要はあります。

今回は、こちらを引用します

事業税優遇廃止案が浮上=開業医の診療報酬−来年度税制改正、政府・与党

2010年度税制改正をめぐり、開業医の報酬に対する個人事業税(地方税)の非課税措置を廃止する案が政府・与党内に浮上してきた。政府税制調査会(会長・藤井裕久財務相)は租税特別措置などの優遇税制をゼロベースで見直す方針を掲げており、年末の税制改正の焦点の一つとなりそうだ。ただ、同措置の存続を求める日本医師会(日医)などの反発は必至で、来年の参院選を控え与党内から異論が噴出することも予想される。
治療の対価として医療保険から医療機関などに支払われる診療報酬は、税制面で各種の優遇を受けており、個人事業主の所得の3〜5%を課税する事業税の非課税措置もその一つ。制度創設以来、開業医の事業所得に当たる診療報酬は非課税扱いが続き、50年以上、手付かずの状態となっている。
同措置については有識者らによる旧政府税調が課税の公平性の観点から速やかな撤廃を求めるなど、自民、公明両党による前政権下でも見直しを求める声が強かったが、日医を有力な支持基盤としていた自民党内の反発で見送られてきた。(2009/10/19-19:17)

(引用ここまで)

メディアにこの点の理解は無理だと思っていますが、実は医療機関の診療報酬については、消費税法上大きな問題点があります。何と、診療報酬については非課税なのです。しかし医薬品などの必要経費については原則として課税・・・コストだけ消費税を負担させられ、その転嫁が事実上不可能になっているところが、現行制度上の問題点です。現状では、各医療機関は消費税分を自らが負担する羽目になってしまい、その分経営成績が悪化しています。
この点を無視して、事業税の面だけ「優遇されている!」と書き飛ばすのはメディアの不見識ですが、果たして与党はどのように判断するか。消費税の分不利をこうむっている代償は、こうした税制面の優遇であり、診療報酬なのですが。診療報酬についてはここ数年マイナス改定が続き、しかも今回のようなことが現実に行われるのであれば、医療機関の損失は大きなものとなるでしょう。

最近、開業医に対する締め付けが厳しくなっている感があります。この前は診療報酬請求に際して、オンライン化を無理やり押し付けようとしていました・・・これも酷いもので、オンライン化に必要な機器は全て自腹で用意することを前提とした、実に横暴極まりない方針でした。何かにつけて国は開業医を圧迫していますが、彼らがいなくなったらどうなるか、少しは考えてのことなのでしょうか?
開業医がいなくなれば、必然的に医療の供給は逼迫します。ただでさえ医師は「不足している」のです。これ以上医師を駆逐する方向の政策を続けていけば、病院も患者が溢れて機能不全に陥りますし、必然的に「診療まで数ヶ月待ち」まで事態は悪化します。我々患者の側にとって、なくてはならない開業医を無理やり奪おうとするのであれば、そのような政府は我々にとって敵であり、それ以外の何物でもありません。

果たして、そこまでキチンと考えた上で、現与党は今回の案を浮上させたのか。「生活を守る」のであれば、当然必要なインフラとしての医療は守らなければなりません。メディアは何かにつけて開業医を目の敵にするのではなく、しっかりと理解した上で「適切な」記事にしてほしいものです。皆が無理解な中、ただ黙々と患者を診る先生方という構図は、実にむなしいものを感じます。
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医大院生を使い捨てにする愚
2009-10-19-Mon  CATEGORY: 医療崩壊
久々にこの話題ですが・・・かなり重要な事項なので書いておきます。どのような組織であっても、人を使い捨てにしたら相応の報いが来ます。今回の判決文については、かなり不満が大きいのも事実です。

今回はこちらを引用します。

こちらより引用

医大院生は勤務医と同じ 「過労で交通死」鳥取大に賠償命令

鳥取大医学部の大学院生で医師だった男性=当時(33)=が付属病院で徹夜勤務をした直後に交通事故死したのは、睡眠不足や過労を生じさせた大学側の責任だとして、両親が鳥取大に損害賠償を求めた訴訟の判決で鳥取地裁は16日、約2千万円の支払いを命じた。

朝日貴浩裁判長は判決理由で「大学院生の業務内容は勤務医と大きく変わらず、業務の性質は精神的負荷が高いものだ」と認定。「大学側には(過酷な勤務で)事故発生が十分予測可能だった」と安全配慮義務違反を認めた。

研修などの名目で無給のまま医療業務に従事している院生の医師について、「雇用」する側の大学に安全配慮義務があることを認める司法判断。医大院生の過酷な勤務実態は国会などでも問題化しており、各地の大学で進む雇用契約締結の動きにも影響しそうだ。

研修医については平成17年の最高裁判決が、労働基準法上の「労働者」に当たるとの初判断を示したが、原告側代理人によると、院生の労働者性を認めた判例はないという

(引用終了)

いろいろ思うところを。

まず、この判決を受けて、鳥取大学がどのような態度をとるか。選択の如何によっては、大学の危機に直結します。少し考えればわかると思います・・・もしこの大学が判決を不服として控訴するなんてことがあったら、自分はこんな大学の世話になりたくありません。皆同じように考えるでしょう。人を大切にしない組織は、真っ先に人が来なくなって立ち行かなくなる・・・当然のことと考えます。
そういえば、同じようなことをやって先生方の不興を買っている自治体もありましたねぇ・・・奈良県では○○○に500万円の値札を付ける一方で、産科医の残業代は判決が出たにもかかわらず支払おうとしません。人の勤労を安く見積もるような場所で自分の身を粉にしてまで働こうなんて、誰が考えてくれるものか。その程度のことが、責任あるはずの立場の者にはわかっていないものなのです。そうした愚鈍さに付き合う義理も義務も、誰も持っていないのですが。

それともうひとつ・・・過労死の責任がたったの2千万円ですか。今後この院生がキャリアを順当に積んでいけば、もっと稼いだはずですねぇ・・・その程度の金額で手を打てと言われて納得するほうが難しいでしょう。医学部の大学院生の立場は弱いものです。学生として扱われる一方(だから給与も出ません)、こんな風に超過勤務を押し付けられ、場合によっては過労死を強要されるわけです。正当な勤務である以上、当然給与その他の支払は必要なわけで。これだけ搾取しても2千万で賠償が済んでしまうという現実を、どのように考えればいいのでしょうか。

このようなことが続くのであれば、確実に大学院に進んで研究を続けようという学生は減るでしょう。そうした学生の減少は、必然的に大学における研究の質を低下させます。医学は臨床だけで成り立つわけではありません。研究が十分に行われなければ、今後今の医療水準を保つのも難しくなるかもしれません。そうした意味で、これはとても危険なニュースです。
対策としては、しっかり勤務分の給与を計算して支給すること、これ以外にありません。大学の仕事で過度に学生を拘束しないことも必要です。勤務医その他のことについても同じなのですが、医療現場で働く、あるいは医療に関与している者の勤務状況に対する問題意識が、社会全体で希薄です。自分たちはすぐに治してもらえなければ騒ぐくせに(今回のインフルエンザ騒ぎなど、典型例です)、医療スタッフはどうなってもいいような態度を平然ととり続ける。これが変わっていかない限り、とてもまともな状況の改善など望めないでしょう。

・・・もともと診療報酬は安いし、最近は補助金も削減されているので大学も厳しいのですが。それが元凶です。もっと必要な部分にお金をかける政治になってほしいものです。
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混合医療は、メフィストファレスのささやき
2009-10-02-Fri  CATEGORY: 医療崩壊
表題ですが、まずこちらをご覧ください。

東京新聞の記事より

1位は日本 最下位は米 先進16カ国の医療制度評価
2009年9月29日 夕刊

【ニューヨーク=阿部伸哉】カナダの非営利調査機関「コンファレンス・ボード・オブ・カナダ」は二十八日、先進国の医療制度ランキングを発表し、日本は十六カ国中で一位に、米国は最下位となった。

医療保険制度改革の議論が進む米国で何かと引き合いに出されるカナダも十位と振るわなかった。

調査は二〇〇六年のデータに基づき、平均寿命やがん死亡率、乳幼児死亡率など十一項目で評価。「A」ランクは日本、スイス、イタリア、ノルウェーの四カ国。カナダは「B」、米国は英国、デンマークとともに最低の「D」だった。医療保険制度の財政状況は勘案されなかった。

国民皆保険制度がない米国では、隣国カナダの皆保険制度が批判、称賛の両面でたびたび比較対象になる。調査でカナダは米国より上位だったものの、急を要さない治療では長期間待たされる実態や、生活習慣病患者の多さなどが課題として指摘された。

(引用ここまで)

何故このような評価が実現され、国際的に認知されているか・・・理由は簡単です。先生方が身を削って、場合によっては命すらなげうって診療してくださった結果です。中原先生はそのおかげで過労死を強いられていますが、同じような境遇にある医師は表ざたにならないだけで、内実は相当多いと予想されます。
そうした先生方に対して、一体我々患者側の人間は、そろいも揃って何をやって来たか。何かあるたび「医療ミスだ!」と喚き散らし、何かに付けて「儲けすぎだ」と中傷し、ひたすら安く働かせようとしてきました。最近は素行の悪いクソ患者があちらこちらで先生方に迷惑ばかり掛けている有様。メディアはそれを押しとどめることなくひたすらそれを煽るだけ煽り、一般大衆をミスリードすることに余念がない。
医療制度の維持のために必要なのはそのような罵詈雑言ではありません。ただひとつ、対価だけが必要です。十分な診療報酬と人間らしい生活が出来る休養のための時間、そして社会全体の理解。これだけのものがあってようやく、現行の健康保険に基づく医療制度は維持できるようになります

しかし「それでは困る」という輩がいるのも事実です。こちらもご覧いただければ。

読売の記事より

「混合診療禁止は適法」原告が逆転・・・高裁

健康保険が使える診療と保険外の診療を併用する「混合診療」を受けた場合、保険診療分を含む全額が患者負担になるのは不当だとして、神奈川県藤沢市のがん患者で団体職員の清郷伸人さん(62)が国を相手取り、保険を受ける権利があることの確認を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。

大谷禎男裁判長は「混合診療は原則禁止されており、一定の要件を満たすもの以外、保険の給付は受けられない」と述べ、受給権を認めた1審・東京地裁判決を取り消し、清郷さんの請求を棄却した。清郷さんは最高裁に上告する方針。

訴訟では、混合診療を禁止とする原則に法的根拠があるかどうかなどが争点となった。1審判決は「法律上、受給権がないとは解釈できない」との初判断を示したが、この日の判決は「健康保険法は、医療の質の確保という観点や財源面の制約から、保険受給の可否の区別を設けており、合理性が認められる」と指摘。「国民の生存権や財産権を侵害する」とした清郷さん側の憲法違反の主張も退け、制度は合憲と判断した。

清郷さんは判決後、記者会見し、「がんや難病の患者の命がさらに危機にさらされる判決で、原告として責任を感じる。どのような治療を受けるかの決定権は、医師と患者に与えられるべきだ。命ある限り戦う」と語気を強めた。

一方、長妻厚生労働相は「判決の具体的内容を十分把握したものではありませんが、国のこれまでの主張が認められたと考えています」との談話を出した。

(2009年9月30日02時04分 読売新聞)

更にもうひとつ。表題に注目してほしいと思います。

読売の主張

混合診療 適用拡大の流れを変えるな(10月1日付・読売社説)

保険医療の在り方をめぐって司法判断が揺れている。

がん患者の男性が国を相手取り、「混合診療」を禁じている現状は不当だと訴えた裁判で、東京高裁は、男性の主張を認めた1審・東京地裁判決を取り消し、混合診療禁止は妥当との判断を示した。

混合診療とは、公的保険で認められた投薬や治療とともに、まだ保険が適用されていない治療法を併用することだ。

現行制度では、保険診療の範囲内なら患者の負担は原則3割で済むが、混合診療を行うと医療費全額が自己負担になってしまう。

提訴した男性は保険がきくインターフェロン療法に加え、保険外の新療法を希望した。併用するとインターフェロンまで全額自己負担になり、結果的に医療の選択肢が狭められるため、現行制度は不当だと訴えた。

共感する人は多いだろう。

ただ、厚生労働省が禁止措置をとってきたことには、それなりの理由がある。

混合診療を認めると、効果や安全性が疑わしい医療が横行しかねない。不心得者の医師が、保険外の高価な検査や投薬を安易に行えば、患者の負担増を招く。

自由診療が主で保険診療が従になってしまうと、患者の経済力によって受ける医療の質に差が生じかねないとの議論もある。

混合診療を全面的に自由化することには反対論も多い。

だが、がんのように深刻な病気は、保険が認められた医療を尽くしても効果がなく、適用外の新しい薬や治療法に望みを託す場合が少なくない。

解禁を望む声に対して、厚労省も混合診療を例外的に認める制度を拡大してきた。

例えば、今でも新たな治療法を医療機関が届け出て「先進療法」に認められれば保険診療と併用できる。未承認薬も以前より早く、混合診療の適用を検討する仕組みができてはいる。

それでも審査のスピードが遅いなどの不満は残る。混合診療を、必要な場合には迅速に認める仕組みをさらに整備し、保険適用につなげていくべきだ。

今回の訴訟は最高裁に持ち込まれる見通しだ。だが裁判の行方にかかわらず、患者の要望に十分応え切れていない所は改善を進めていく必要があろう。

混合診療の適用拡大は、全面解禁論に背を押される形で進んできた。その流れを、高裁判決を口実に止めてはならない。

(2009年10月1日01時04分 読売新聞)

混合診療には、自分も反対の立場をとります。なぜなら、混合診療になれば保険でカバーされる範囲は将来高確率で狭くなることが予想され、それ以外は全て高額の自己負担を強いられることになるからです。医療は基本的に高価なもので、それを皆に合理的な価格で行き届かせるために公的医療保険が存在しているのです。このことを失念して、あるいはわざと無視して混合診療を主張している者は、どこまでいっても愚かか卑しいか、あるいはその両方かの判断にしか値しません。
このような主張を大手のマスコミが行うのには、当然それなりの理由があります。メディアの営業成績は最近特に悪く、これまで以上に広告収入への依存度が高くなっていることが推察されます。財界は医療を金儲けの場にすることしか頭に無く、保険会社は高額の保険を押しつけようと、また一般の企業は保険料の負担を免れようと、さまざまな形で保健医療を壊そうとしています。そうした輩の広告料惜しさに、銭ゲバどもの手先として「混合診療への流れ」とやらを、でっち上げようとしているに過ぎない。
賢明な皆さんには、絶対にそのような安っぽい詐欺に引っかかってほしくは無いものです。混合診療は一時的に患者の選択肢を増やすでしょうが、時間がたてば莫大な診療費を当ても無い医療行為のために支払い続けるか、あるいは診療費が払えなくなって捨てられるかの絶望的な二択しか残らなくなります。高確率でそうなると、断言するだけの理由だってあります。今のアメリカがそうだと言えば、わかっていただけるかと(また、それでズバリわかっていただきたいとも思います)。

アメリカにはいまだに公的な医療保険制度が無く、そのため自費で高額の医療費を払わなければ診療してもらえません。保険屋はきまってがめつく、何かにつけて免責条項を盾に保険金の支払を渋ります。結果として、上質の医療はほんの一部の金持ちの私物に成り下がっています。それが、世界で最も富強を誇るはずの、アメリカの現実なのです。これが無限定の「自由」とやらの、惨めな結末なのです・・・それでも、かくも惨めな「自由」を皆は欲するのか。あるいは、そのような「自由」に皆を導くのが、ジャーナリズムの責務であると偽るつもりなのか。
今回の読売の記事は論外といえますが、果たしてそうしたメディアの裏切りを指弾できるほど、皆はまともであったのか。答えは否・・・上で書いたように、日本の医療は世界的にも高い水準であるはずのところ、国内の支持が全く無く、むしろ無法な要求ばかりがまかり通っているのが現実。日本の一般大衆が、まず自分たちが如何に恵まれてきたか、その理由がどこにあったのかしっかり理解することなしに、先のことはないかと思います。その上で、医療保険制度をどのようにして維持・発展させるか真剣に考える必要があります。

混合診療は悪魔のささやきに等しいものがあります。果たして、皆そのことをキチンとわかった上で物を言い、行動できるのか。この程度のまやかしに乗せられているうちは、まだまだ甘いとだけは申し上げておきます。
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